Motown初のNo.1ガール・グループ、The Marvelettes

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The Marvelettes 『The Ultimate Collection』 ♪本文末に記事に関連した動画有

■ '60年代半ばのアメリカの音楽シーンにおいてブリティッシュ・インヴェイジョンをものともせず、同時期に黄金時代を築き、その後も長きに渡ってソウル・ミュージックの発展に多大な貢献をしたレコード・レーベルがデトロイトのMotown RecordsTamla-Motown)でした。今回は、そのモータウン所属のアーティストとしてレーベル初の全米No.1ヒットを放ち、モータウンが全米屈指のヒット曲量産拠点としての地位を確立する礎を築いた重要なガール・グループ、The Marvelettesを紹介します。 

モータウン(タムラ)は黒人によって設立された初のレーベルとして知られていますが、そもそもソングライターとして知人であるJackie Wilsonに曲を提供したり、The Miraclesをデビュー('58年)当初からプロデュースしていた人物、Berry Gordy, Jr.が'59年1月、Tamla Recordsを地元デトロイトに設立したのがその始まりでした。Motown Records自体も'59年12月に設立されていますが、一般にモータウン・レコードといえば、その後作られる多くの系列レーベルをも含めた総称として用いられる事が多く、この場合タムラ/モータウンとか単にモータウン等と呼ばれたりもします。ちなみに、"Tamla"はかなり意外なんですが、Debbie Reynoldsのヒット曲「Tammy」('57年全米1位)にちなんで"Tammy Records"としようとした所、既に同じ名前のレーベルが存在したためTamla Recordsとしたそうで、"Motown"は自動車産業の中心地として名高いデトロイトの愛称"Motor town"を略したもの。
また、モータウンからリリースされた曲はR&Bをより都会的にポップに洗練させたもので、躍動的なドライヴ感に満ちあふれたビートやあらゆる楽器等を駆使した厚みのあるサウンドが特徴的。'60年代前半に確立された他に類を見ないこの独自のサウンドは、その全盛時代にモータウン・サウンド等と呼ばれ一つのジャンルを形成するにまで至っています。

そのモータウン最初のリリースが、"Tamla 101"として発表されたMarv Johnsonの「Come to Me」('59年全米30位、R&B6位)で、最初のR&B1位曲がThe Miraclesの「Shop Around」('60年全米2位)、そして最初の全米ポップ・チャート1位曲が今回の主役であるマーヴェレッツの「Please Mr. Postman」となっています。
マーヴェレッツのプロフィールは後述するとして、まずはCDを紹介しておきます。

CD:[試聴/amazon]
The Ultimate Collection現在マーヴェレッツの入手しやすいCDでは、内容の充実度と収録曲数からみて、やはり『The Ultimate Collection』がイチ押しです。
彼女達の全活動期間からバランスよく25曲が選曲されており、初期のR&B的泥臭さとポップなガール・グループ・サウンドが同居した曲から後期のスマートに洗練されたソウル・ナンバーまで、マーヴェレッツの全ての魅力を堪能できます。また、全米Top100にチャート・インした23曲の内22曲が収録されているのも嬉しい限り。ちなみに本盤に収録されていない唯一のチャート・ヒット曲は、「I'm Gonna Hold On As Long As I Can」('69年全米76位)です。

モータウンの3大ガール・グループと言えば、The SupremesMartha & The Vandellas、そしてマーヴェレッツの3組が挙げられますが、'60年代半ば以降大ヒットを連発したスプリームスやエキサイティングなダンス・ヒットが強烈な印象を与えるマーサ&ザ・ヴァンデラスは華やかなイメージがありますよね。前2組と違って大都会デトロイト出身ではなく、田舎町出身だった事に起因するのかどうか分かりませんが、一般にマーヴェレッツにはどことなく地味なイメージがつきまといます。しかしながらヴォーカル・グループとしての実力は他の2組に勝るとも劣らないし、最初にスターダムにのし上がったのは紛れもなくマーヴェレッツなのです。

特に、黒人音楽がR&Bからソウルへと移行する転換期と重なった初期におけるマーヴェレッツの個性は特筆すべきで、R&Bとソウル、そして当時大きな流れを形成していたガール・グループ・サウンドをモータウン特有の躍動感あふれるポップ感覚でまとめ上げたサウンド、Gladys Hortonのどこか垢抜けなさを感じさせる点がチャーミングな芯の強いヴォーカル等は唯一無二のものと言えるでしょう。後期のマーヴェレッツについては十分な個性を発揮したとは言えませんが、主にWanda Youngをリード・ヴォーカルに据え、より洗練されたモータウン・サウンドをバックにソウル時代に対応したスタイルになっています。この時期は悩殺的に響くWanda Youngのヴォーカルが聴きものでしょうか。

本盤は'60年代のガール・グループ・サウンドやアーリー・ソウル(初期のソウル・ミュージック)、ポップ色の強いソウルが好きな人にぜひおすすめです。

(収録曲目)
01 Please Mr. Postman('61年全米1位、R&B1位)
The Marvelettesにとって最大のヒットとなったデビュー曲で、演奏をMotownのセッション・ミュージシャンThe Funk Brothersが担当(ドラムはMarvin Gaye)した60's Girl Popsの大名曲。R&B色濃厚なMotown初期のポップ感覚とGladys Hortonの力強くも無邪気な歌唱が最大の魅力と言えます。この曲は他に、John LennonのシャウトっぷりがカッコいいThe BeatlesのR&Rカヴァー('63年『ウィズ・ザ・ビートルズ』)やひたすらPopなThe Carpentersのエヴァー・グリーン・カヴァー('74年全米1位)が有名ですが、曲自体が良いだけにいずれのヴァージョンも超一級。また、この曲に強く影響を受けたDee Dee Sharpの「Mashed Potato Time」('62年全米2位)というダンス・ナンバーも生まれており、面白い事に本家のThe Marvelettesが同年の2ndアルバム『The Marvelettes Sing』の中で「Mashed Potato Time」をカヴァーしています。
02 Playboy('62年全米7位、R&B4位)
「Please Mr. Postman」タイプのヒット曲で、厚みのあるバック・コーラスによるコール&レスポンスが特徴的な好曲(3rdシングル)。
03 So Long Baby('61年)
「Please Mr. Postman」のB面で発表されたアーリーSoulの名バラード。と言うか、厳密に言えばDoo WopからSoulへの過渡期的サウンドといった所でしょうか。何と言ってもタイトなコーラスをバックに甲高い声で熱唱するWanda Youngのヴォーカルが印象的。
04 Beechwood 4-5789('62年全米17位、R&B7位)
個人的に最も好きなThe Marvelettesの曲で、Popに弾けるメロディーを引き締めるかの様なGladys Hortonのパワフルな歌いっぷりが素晴らしい60's Girl Popsの大傑作(4thシングル)。The Marvelettesの曲の中でも最もPopなこの曲は、またもやThe Carpentersがカヴァー('81年『Made in America』)しており、'82年にはシングル・カットされて全米74位を記録しています。
05 Someday, Someway('62年R&B8位)
「Beechwood 4-5789」のB面で発表されたミディアム・テンポのSoul風Pops。
06 Strange I Know('62年全米49位、R&B10位)
切なさを漂わせるGladys Hortonの歌唱が聴く者をゾクゾクさせるSoul風Popsの名曲(5thシングル)。バックで哀感を強調する特徴的なギター・フレーズも印象的。
07 Too Strong to Be Strung Along('62年)
「Strange I Know」のB面曲ですが、シリアスな雰囲気のA面とは正反対に明るくPopな曲となっています(「Please Mr. Postman」と同系統)。
08 Twistin' Postman('62年全米34位、R&B13位)
デビュー・ヒット「Please Mr. Postman」にあやかった続編で、さらに当時隆盛を極めたツイスト・ブームをも当て込んだThe Marvelettesの2ndシングル。全体的にノリのいいツイスト・ナンバーですが、特にセンチメンタルな冒頭の語りからダンサブルなメロディーに急変する部分がスリリング。
09 Locking up My Heart('63年全米44位、R&B25位)
Gladys Hortonの伸びやかな歌唱とWanda Youngの高音ヴォイスの対比が絶品のいかにもMotown的な明るいナンバー(6thシングル)。
10 Forever('63年全米78位、R&B24位)
Wanda Youngがリード・ヴォーカルを務めた「Locking up My Heart」のB面曲ながら、究極的にスウィートなアーリーSoulの傑作バラードといった趣。また、レーベル・メイトのMarvin Gayeが、'64年のヒット曲「How Sweet It Is (To Be Loved by You)」(全米6位、R&B3位)のB面でカヴァーしたヴァージョンも極上の出来に仕上がっています。
11 My Daddy Knows Best('63年全米67位)
The Marvelettes7枚目のシングルとして発表されたPopsナンバー。
12 As Long as I Know He's Mine('63年全米47位)
Smokey Robinsonのペンによる60's Girl Popsの隠れた名曲と言える出来で、キャッチーなコーラス・フレーズが楽しいナンバー(8thシングル)。
13 He's a Good Guy (Yes He Is)('64年全米55位)
「As Long as I Know He's Mine」に引き続きSmokey Robinsonの作品を取り上げたThe Marvelettesの9thシングルで、抜群のPop感覚に満ちたチャーミングなダンス・ナンバー。
14 You're My Remedy('64年全米48位)
The Marvelettes10枚目のシングルとして発表されたSmokey Robinson作品第3弾。
15 Too Many Fish in the Sea('64年全米25位、R&B15位)
完全にSoul時代に突入したThe Marvelettesが放ったダンス・ナンバー(11thシングル)。ちなみにこの曲は、Motownの名ソングライター・チームHolland-Dozier-Hollandから提供された「Where Did Our Love Go」を断ってレコーディングした曲だそうです。もちろん「Where Did Our Love Go」はThe Supremesが取り上げて大ヒットさせた彼女達にとっての初の全米1位曲で、それを手始めに'64年から'65年にかけて5曲連続No.1を達成する事になるんですよね。
16 I'll Keep Holding On('65年全米34位、R&B11位)
The Marvelettes12枚目のシングル曲。この時期以降リード・ヴォーカルはほとんどWanda Youngとなり、The MarvelettesのサウンドもThe Supremesっぽくなっていきます。Diana Rossを思わせるWanda Youngの甲高い声が、なおさらThe Supremesを強く連想させるのかもしれませんが...
17 Danger! Heartbreak Dead Ahead('65年全米61位、R&B11位)
The Marvelettes13枚目のシングル曲。
18 Don't Mess With Bill('65年全米7位、R&B3位)
Smokey Robinsonの作品を取り上げてThe Marvelettesが久しぶりに放った大ヒット曲(14thシングル)で、やはりThe Supremes風のセクシー&クールな1曲。
19 You're the One('66年全米48位、R&B20位)
The Marvelettes15枚目のシングル曲(Smokey Robinson作)。
20 My Baby Must Be a Magician('67年全米17位、R&B8位)
Doo Wopを連想させる男声低音ヴォイスで幕を開けるも、曲自体はSmokey Robinsonのペンによるより洗練されたSoulナンバーとなっています(18thシングル)。
21 The Hunter Gets Captured by the Game('67年全米13位、R&B2位)
これまたSmokey Robinsonの作品で、「Don't Mess With Bill」と同系統のセクシーなSoulナンバー(16thシングル)。
22 Destination: Anywhere('68年全米63位、R&B28位)
The Marvelettes20枚目のシングル曲。
23 Here I Am Baby('68年全米44位、R&B14位)
19枚目のシングルとして発表されたSmokey Robinsonの作品で、この時期のMotown特有のグルーヴを感じさせる少しファンキーな曲(19thシングル)。
24 When You're Young and in Love('67年全米23位、R&B9位)
Ruby & The Romanticsの隠れた名曲('64年全米48位)をオリジナルに忠実にカヴァーしたもの(17thシングル)。
25 That's How Heartaches Are Made('69年全米97位)
Baby Washingtonがパワフルに歌った'63年の曲(全米40位、R&B10位)をWanda Youngがテンポを少し落としてマイルドに歌ったカヴァー(22ndシングル)。オリジナルとはまた違ったWanda Youngのしっとりとした歌唱がいい味を出していますが、この曲がThe Marvelettesにとって最後のヒット曲となります。
■ The Marvelettes(マーヴェレッツ)について

The Marvelettesの歴史は'50年代末にさかのぼり、ミシガン州インクスターでインクスター高校に通うGladys HortonGeorgia Dobbinsの2人の女子高生が、彼女達のバック・ヴォーカルとして学校の友人3人(Georgeanna TillmanWyanetta CowartKatherine Anderson)を誘って結成したガール・グループがその始まりでした。この5人組のグループは当初自らをThe Casinyetsと名乗って活動しますが、'61年の初めにはグループ名をThe Marvelsと改名します。そして、改名後間もなく参加した高校のタレント・ショーで見事4位に入賞して、モータウン・レコードのオーディションを受ける権利を獲得する訳です。

で、早速'61年4月に行なわれた1回目のモータウン・オーディションでは、彼女達のアイドルだったThe Chantelsの「He's Gone」('57年全米71位)やThe Shirellesの「I Met Him On A Sunday」('58年全米49位)を歌い首尾よくモータウン側の興味を惹く事に成功します。が、これで即契約という訳にはいかず、レーベル・オーナーのBerry Gordy, Jr.から次回オリジナル曲を用意して来る様に言い渡されます。話はそれますが、マーヴェルズが歌った「He's Gone」や「I Met Him On A Sunday」を是非聴いてみたいものですね。
そこでメンバーのジョージア・ドビンズが友人のピアニストWilliam Garrettに頼んで彼の未完のブルース曲を譲り受け、それを自身でティーンエイジャー向けの歌詞とガール・グループ風のメロディーをつけてオリジナル曲を完成させます。何を隠そうこの曲が「Please Mr. Postman」なのです!!

無事オリジナル曲を用意して2回目のオーディションで自らがリード・ヴォーカルとして歌うつもりだったジョージア・ドビンズですが、何とオーディション直前に脱退を余儀なくされ、代わりにWanda Youngが加入することになります。なお、ジョージア・ドビンズ脱退の理由については、厳格な父親がまだ高校生だった娘をナイトクラブで歌わせる事に反対したためだとか、病気の母親を看病するためだとか諸説あってはっきりしていません。
それはともかく、2回目のオーディションで「Please Mr. Postman」を歌ったマーヴェルズは、見事オーディションに合格してモータウンと契約を交わします。彼女達はベリー・ゴーディ・ジュニアの提案でThe Marvelettesマーヴェレッツ)と改名し、Brian Hollandらの手でさらにポップに手直しされた「Please Mr. Postman」でTamla Recordsからデビューを飾ります('61年8月21日)。

The Marvelettes
Gladys Horton(リード・ヴォーカル)
'67年にAnne Boganと交代
Wanda YoungWanda Rogers)(リード・ヴォーカル)
Georgeanna Tillman(バック・ヴォーカル)
'65年脱退
Wyanetta CowartJuanita Cowart)(バック・ヴォーカル)
'64年脱退
Katherine Anderson(バック・ヴォーカル)

マーヴェレッツは、デビュー以降ヒットを連発すると共にテレビやモータウン所属アーティストによるパッケージ・ツアー、『Motortown Revue』等で好評を得ますが、皮肉にもThe Supremes等の活躍によってモータウンが栄華を極めた'60年代半ば頃からその人気にも陰りが見え始めます。また、丁度その頃からマーヴェレッツの音楽性にも変化が見られ、オリジナル・メンバーの脱退やメンバー交代も相次ぎ、最終的に'70年に解散してしまいます。

■ 今回の無料動画はマーヴェレッツで、やはり彼女達の代表曲「Please Mr. Postman」を紹介します。
映像はモータウンのアーティストが数多く出演したことで知られるデトロイトの音楽ヴァラエティー番組、『Teen Town』('65年~'66年)からで、マーヴェレッツが'65年に出演した時のものです。ここでのマーヴェレッツのメンバーが3人編成なので、ジョージアンナ・ティルマンが脱退して間もない頃のものですね。ちなみにこの時のメンバーは、画面向かって左からワンダ・ヤングキャサリン・アンダーソングラディス・ホートンの3人です。

この曲を歌った5人編成によるパフォーマンスでないのは少々残念ですが、ガール・グループ・サウンドに付き物のチャーミングな振り付けが見ものとなっています。

それでは、マーヴェレッツによるモータウン初の全米No.1ソング、「Please Mr. Postman」をご覧下さい。

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